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このメールマガジンは、世界情勢の裏側、エネルギー、水と食物、テクノロジーとメディアなどの未来の動向を読み解く、【高城未来研究所】が、毎週金曜日にお届けする高城剛主筆のレポートです。
マスメディアではなかなかお話しできない俯瞰的な視点と私見を、出来るだけ早くお伝えいたします。
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┃高┃城┃未┃来┃研┃究┃所┃【Future Report】
Vol.756
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/ 2025年12月12日発行 /
■目次
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… 1. 近況
… 2. 世界の俯瞰図
… 3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
… 4.「病」との対話
… 5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
… 6. Q&Aコーナー
… 7. 連載のお知らせ
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■ 1. 近況
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主筆高城剛は、毎週のように世界を移動しておりますので、このメールマガジンが発行される国や都市は、都度に異なります。
まずは、いまどの都市にいて、なにを見て、どう思っているのか、をお知らせしたいと思います。
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今週は、ロサンゼルスにいます。
おそらく、この街の凋落をここまで明確に感じたのは初めてかもしれません。本来、クリスマスシーズンで賑わうモールに行けば、ほとんど人がいなく、かつて週末ともなれば駐車場が満車だった「アメリカの象徴」のような場所が、今や空虚なショーケースのように見えます。ブランド店が軒を連ねていても、入店しているのはほぼ皆無。以前、この街に住んでいましたが、とても同じ場所とは思えません。
パンデミック以降、リモートワークが完全に定着したことも大きい要因です。テック企業はもちろん、一般企業も「オフィスはもういらない」と判断し、ダウンタウンの高層ビルは空室率が40%を超えています。富裕層はさらに極端で、ビバリーヒルズやベルエア、マリブのゲーテッド・コミュニティに引きこもり、要塞のような家からほとんど出ません。AmazonとInstacartで生活必需品は届くし、Zoomで仕事も会議も済む。
子どもは近隣の学校にピンポイントで通い、オンラインスクールで習い事。大人たちはプライベートジムとプールで運動。こうしてまったく街に出なくなりました。また「自宅要塞化」は、セキュリティの懸念から加速しており、LAの富裕層世帯の外出頻度はパンデミック前の半分以下に留まっています。いま、この国で起きている本質的な変化は、「自由」よりも「防衛」が優先される社会になったと強く感じます。
この空虚さの背景には、米国がいま直面している猛烈なインフレも後押ししています。物価は、もはや日常感覚を超えて跳ね上がって、ランチが30ドルを超え(例:ラーメンセット4500円超!)、コーヒー一杯が8ドルする。かつて「手軽な外食文化」を誇ったLAで、いまや外食だけでなく、一般的な家庭は食費で大悲鳴を上げています。
FRBのデータでも、2024年の消費者物価指数(CPI)は前年比3.2%上昇と抑制されたものの、食料品や住宅費は依然として10%以上の伸びを示しており、中間層の家計を圧迫しています。このインフレの余波は、娯楽消費にも直撃を与え、映画館のチケット代が値上がりした結果、娯楽自体が「贅沢」化し、ライブはパンデミック後の価格高騰で「一部のスーパースターと富裕層のためのイベント」になりつつあります。
この娯楽を作って街を牽引、いや米国を牽引していたハリウッド産業がボロボロです。撮影スタジオには「For Lease」の札がいくつもかかっています。かつては世界中から夢を求めて人材が集まった場所ですが、周囲にはホームレスのテントが立ち並んで治安が著しく悪化し、パンデミックバブルが去って成長が鈍化しているNetflixも人員削減を続けています。
ロサンゼルス市・郡の公式フィルムオフィス「FilmLA」の報告によれば、パンデミックの外出禁止で仕事が激減していた2021年ロケ撮影日数18,560日に対し、2024年は7,716日。わずか3年間で6割の減少です。長編映画も2025年第1四半期で前年比29%減。ロサンゼルスの主要スタジオ17社の平均稼働率は、2024年に63%まで低下しました。
また、AIの台頭によって、特撮会社や編集スタジオの単価も極端に落ち、レイオフが続きます。この結果、LAのエンターテイメント雇用は2022年の14万2000人から2024年末には10万人を割り込み、わずか二年強で3割以上の人たちがクリエイティブ職に就く人々の仕事を失いました。友人の撮影監督に聞くと、現在二人に一人以上、仕事がない状態だとのことです。もはやロサンゼルスという街を活気づけてきた「夢の製造業」が、夢をつくり出す経済的余力を失いつつあるのです。
その象徴的な出来事が、NetflixがWarner Bros. Discoveryを買収すると発表したニュースです。「映画の時代が終わり、プラットフォームの時代が完全に始まった」のを象徴しているかのようにも思えますが、実情はNetflixさえも伸び悩んでおり、かつて日本のバブル崩壊時に次々と巨大銀行が吸収合併して生き延びた様に似ています。
20世紀のアメリカは、ハリウッド映画というかたちで、全世界に「自由」「豊かさ」「ヒーロー」「ハッピーエンド」という価値観を輸出してきました。それは軍事力やドルと並ぶ、最大の国家ブランディング装置であり、ソフトパワーそのものでした。
ですが、スタジオがアルゴリズムの下請けとなり、プラットフォームが世界中のローカル作品、いや、ショート動画と同じ棚に並んだとき、マーケティングに巨費を投じて市場を抑えてきた「アメリカの物語」は特権を失います。
世界の視聴者は、韓国ドラマもインド映画も中南米のシリーズも、そして素人が作ったショート動画も一本のサムネイルとしてフラットにスクロールし、「アメリカ産」のラベルに特別な敬意を払わなくなりつつあります。この結果、アメリカ人に共通だった「国民的物語」は失われました。
かつて映画や音楽がそれをつないでいたのですが、ハリウッドが力を失った今、アメリカには「自身を描く鏡」が存在しません。
今後、ハリウッドは「米国国家の神話工場」から「分散したプラットフォーム群の単ノード」へと急速に変貌し、「夢の工場」から「データの下請け工場」へと転落します。星条旗を背負ったスーパーヒーローの時代は終わり、匿名のアルゴリズムが最適化した「バズる物語」が世界を席巻する。
ただし、アメリカがその新しい舞台で覇権を握れなければ、「アメリカンドリーム」という物語は、他国のサーバー上で、別の言語と価値観によってリミックスされていくことになります。
そのとき、アメリカという国は、自らの物語を書き続けられるのか。それとも誰かの書いた物語の登場人物にすぎないのか。
ハリウッドの終焉は、全労働集約型産業の未来の暗示に思えてなりません。
ちなみに今週、12月にも関わらず日中の気温が29度まであがりました。
かつて好天を求めて映画産業がこの地に根付きましたが、例年より10度も高く、気候の面からしてもLAは別の街になったのです。
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■ 2. 世界の俯瞰図
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日本で発行されている大手新聞社の記事の9割は、日本国内の記事で構成されています。
しかし、このグローバル化した世界では、政治や経済、テクノロジーや食べ物までもが、一国だけで完結することはありません。
このコーナーでは、世界を俯瞰的に見ながら、日本の立ち位置を考えていきたいと思います。
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長期にわたり、米国の若年層を中心に増え続ける「あたらしい社会主義」につきまして、私見たっぷりにお話ししています。
今後「あたらしい社会主義」は、資本主義の限界と共に米国を中心に世界中で吹き荒れると予測します。
今週12月10日、オーストラリアで世界初の16歳未満のSNS利用を全面的に禁止する法律が施行されました。Facebook、Instagram、TikTok、YouTube、X、Reddit、Snapchatなど、これらすべてのプラットフォームで、100万人以上のアカウントが一夜にして停止されたのです。
同じように欧州議会は11月、16歳未満のSNS利用をEU全域で禁止する決議を採択しました。フランスはすでに2023年から15歳未満の親の同意なしでのSNS利用を禁止しており、マクロン大統領は15歳未満の完全禁止を推進しています。イタリアでは14歳未満に親の同意が必要で、ノルウェーは同意年齢を13歳から15歳に引き上げることを検討中。
スペイン、ギリシャ、デンマーク、スロベニア、キプロスも同様の規制に前向きです。
韓国は2026年から学校でのスマートフォン使用を全面禁止します。アメリカでもフロリダ州が14歳未満の完全禁止し、中国は14歳未満は1日40分までと時間規制に踏み切り、ブラジル、インドまでもが追随しています。
オーストラリアのアルバニージー首相は、SNSを「災厄」と呼び、「子どもたちの精神的健康を守るため」と説明し、世論調査では国民の77%がこの法律を支持しています。一見すると、これは正しい判断のように思えます。SNSが若者のメンタルヘルスに悪影響を与えているという研究は数多く存在しますし、サイバーいじめやオンライン犯罪から子どもを守りたいという親心は、万国共通のものには違いありません。
しかし、世界を俯瞰して見ると、この急激な「保護」の波には、別の意味も透けて見えます。それは、SNSが生み出してしまった「予測不能な政治的結果」に対する支配層の恐怖で、つまり、「若者を守りたい」というより、「既存の体制を守りたい」という本音がどこかに隠されているように思えてなりません。
SNSが普及する以前、情報の主な流通経路はテレビ、新聞、大手出版社、そして国家が管理する教育システムでした。これらはすべて、資本と権力の側がアクセスを制御しやすい「一方向の装置」です。どのニュースを一面に載せるか、どの歴史観を教科書に載せるか、どの番組をゴールデンタイムに流すか。その決定権は、ごく少数の人間が握っていました。
ところがSNSは、その構造を根本から変えてしまいました。誰もが発信者になり、10代の学生が、首相やCEOより大きな影響力を持つことも起こり得るのが現代社会です。しかもアルゴリズムは、「権威のある情報」ではなく、「感情を揺さぶる情報」を優先的に拡散します。この組み合わせが、既存の政治秩序や体制にとって、最悪の条件を作り出してしまったのです。
その結果として世界各地で浮上してきたのが、若い世代の左傾化です。気候変動、ジェンダー、格差、反資本主義、反エリート主義。こうしたテーマを掲げたインフルエンサーがSNS上で支持を集め、既存政党の左側に位置する「民主社会主義」的なムーブメントが、国境を越えて連帯を見せはじめました。
ここでポイントになるのは、彼らの多くが「共産主義」や「階級闘争」などの古い語彙にはほとんど関心がないことです。むしろ、「気候変動」「ベーシックインカム」「学生ローン免除」「医療と教育の公共化」「メガテック課税」といった、きわめて具体的で現代的な要求を掲げています。
これは教科書や大学の講義からではなく、SNS上の短い動画やミーム、個人的な体験談の連鎖から生まれた「感覚としての政治」です。重要なのは、このタイプの左傾化が、旧来のリベラルエリートにとっても「厄介な存在」だという点です。
彼らは、企業献金を受け取りながら口先だけ平等を語る中道左派政党ではなく、「もっと根本的な再分配」を求め始めています。つまり、民主社会主義の台頭は、保守だけでなく、既存のリベラルエスタブリッシュメントにとっても脅威なのです。
ここで少し、歴史を振り返ってみましょう。2010年から2012年にかけて、中東と北アフリカで「アラブの春」と呼ばれる一連の民主化運動が起きました。チュニジア、エジプト、リビア、シリア。長年続いた独裁政権が、次々と倒れていき、この革命において、SNSは決定的な役割を果たしました。
当時言われていた「Facebook革命」という呼び方は、やや誇張かもしれません。実際に革命を起こしたのは、あくまで街頭に出た人々です。しかしSNSは、それまでバラバラだった不満を結集させ、運動を組織し、世界に発信する手段を提供しました。情報を完全にコントロールできていた独裁政権にとって、SNSの台頭は悪夢のような出来事でした。
そして、同じことがアメリカでも起きました。2016年、バーモント州の無名に近い上院議員バーニー・サンダースは、民主党の大統領予備選挙で、ヒラリー・クリントンを筆頭とする巨大な「党の機構」に挑みました。サンダースは「民主社会主義者」を自称し、国民皆保険、大学学費無償化、富裕層への増税といった、それまでアメリカの主流政治では「過激」とされてきた政策を掲げました。
当時は、大手によるメディアスクラムに押し潰されましたが、興味深いことにビッグテックの台頭とともにSNSユーザーと民主社会主義者は急速に増え続け、2018年、28歳のバーテンダーだったアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)は、10期連続当選の現職議員を破って下院議員に当選し、今年、ゾーラン・マムダニをニューヨーク市長に当選させました。
また、2010年代から2020年代初頭にかけて、世界中で同時多発的に起きた現象がありました。前述の「アラブの春」のほか、香港デモ、チリ暴動、フランス黄色いベスト運動、ブラック・ライヴズ・マター、ミャンマーの春革革命など、どれも共通項はすべて、若年層がSNSを駆使して体制を揺さぶった反体制の社会現象です。
特に決定的だったのは、2020年代に入ってからの若年層の「世界同時左傾化」です。
スウェーデンでは25歳以下の投票率が急上昇し、2022年の選挙で社会民主党が若年層票を大量に獲得。アメリカでは2021年の時点でZ世代の72%が「社会主義に好意的」と回答。イギリスではジェレミー・コービンが2017年総選挙で若年層の8割近い支持を集め、保守党を追い詰めました。
チリでは2019年の学生デモがTikTokとInstagramで拡散し、30年続いたピノチェト憲法を廃止に追い込み、左派政権を誕生させました。
これらの運動に共通していたのは、「既存のマスメディアを通さない、横の繋がり」でした。
テレビや新聞は年配層が支配しています。そこでは「現実的な選択肢」は常に中道右派か中道左派の範囲に収まるよう設計されています。
しかしTikTokやInstagram、Twitter(現X)では、17歳の高校生がマルクスを読み直し、19歳の大学生が「住宅は人権だ」と叫び、21歳のインフルエンサーが「億万長者は存在してはいけない」と発信し、それが瞬時に数百万人の若者に届く。これが既存権力にとって最大の脅威だったのです。
果たして、2020年代に入ってからのワクチン忌避や「世界同時左傾化」と呼応するように、WHOが「SNS依存は公衆衛生上の危機」と声明を出したのは、偶然なのでしょうか?
もしくは、世界同時SNS規制こそが、次のカウンターレボリューションになるのでしょうか?
次週に続きます。
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■ 3.デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
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このコーナーでは、日本人がロングステイ(長期滞在)やデュアルライフ(二重生活)を行うのに適した“理想の地”を模索していきます。
ひとつの都市にスポットをあて、その地の基本データから滞在費用、ビザの手続き方法など、ロングステイに役立つ情報を計4回に分けて紹介します。バンクーバー篇の3回目となる今回は、現地の経済状況、就労に関するビザ、ビジネスを展開する方法などについてレポートします。
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CASE:189 第3回 カナダ「バンクーバー」(全4回)
カナダ西海岸を代表する都市であるバンクーバーは、東カナダから続く鉄道の終着駅として林業や観光業で発展。カナダ最大であると同時に、アメリカ西海岸でも最大の港湾、バンクーバー港を有し、太平洋側のゲートウェイとして貿易の要衝とされてきた。近年は北米のIT拠点としても急成長しており、AIやソフトウェア開発、ゲーム開発も盛んに行われている。世界中からの移民で成り立っている社会において、こうしたビジネスはさまざまな可能性に満ちているといえるだろう。
就労に関するビザについてだが、外国人がカナダ国内で就業するには、外交官の公用赴任など特殊な場合を除き、事前に就労許可証(Work Permit)を取得しておく必要がある。日本企業の海外駐在員の場合、書類審査のみで許可証が発行される。なおカナダへのビジネス出張者については、就労許可証の取得は不要で、6カ月の滞在が可能だが、前回のレポートで触れた通り、電子渡航認証(eTA)の取得が義務となっている。
■日本からの海外駐在員(企業内転勤者/Intra corporate transferees)
TPP11(*日本を含む11カ国が加盟する「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定」。2017年にアメリカがTPPを離脱したあとに再開されたFTA(自由貿易協定))により、最初の申請で最長3年間の就労許可証が取得可能。延長もできる。企業内転勤者として認められるのは、経営責任者(executives)、管理職(managers)、専門職(specialists)の職種。
なお、企業内転勤者としてビザを申請するには、申請前の3年間のうち、1年間は、当該企業の経営者もしくは従業員である必要がある。またTPP11では、このほかに投資家(investors)や専門家(professionals and technicians)枠による就労許可も設けられており、最初の申請で最長1年間の取得が可能。延長もできる。
■エクスプレス・エントリー(Express Entry System/EES)
カナダ移民局が2015年1月に導入した、移民申請管理システム。カナダ移民局が、申請者が登録したプロフィール(年齡、学歴、職歴、語学力、配偶者の有無など)に対して、CRS(Comprehensive Ranking System)をもとに点数を付け、高得点者に優先的に永住権申請の権利を与える。先着順ではなく、カナダでの成功の可能性が高い個人が優先的に審査されるのが特徴で、不定期で抽選が行われる。高得点者は移民局からInvitation to Apply(ITA)という招待状を受け取り、申請を行うことになる。
ちなみにカナダ移民局は今月8日に、2026年のターゲットとなるカテゴリーを発表しており、以下の7つとなっている。(A)フランス語能力が高い人 (B)ヘルスケアおよび社会福祉分野従事者 (C)科学、技術、工学、数学(STEM)分野の専門職従事者 (D)職人計技能職従事者 (E)農業・農産食品業従事者 (F)教育職従事者 (G)カナダ就労経験1年の医師。 なお(G)が新規追加のカテゴリーとなっており、毎年見直しが行われている。
■スタートアップビザ(Start-up Visa Program)
カナダで革新的な事業を立ち上げ、カナダ人の雇用を創出し、世界市場で競争できるスキルを持つ起業家を対象とするビザ。外国人起業家と経験豊富な民間投資団体をタイアップさせ、新しい事業をスタートアップさせる、世界初のプログラムとなっている。申請の主な条件は、以下の通り。
(A)移民局指定の投資団体から投資の確約を得た時点で、各申請者がその時点で発行されている企業の全株式に付された議決権の10%以上を保有していること
(B)移民局指定の投資団体から確約を得た時点で、申請者と指定投資団体が共同で、その時点で発行されている会社の全株式に付随する、総議決権の50%以上を保有していること
(C)申請者が永住権を取得した時点で、カナダ国内から事業の積極的かつ継続的な経営を行い、事業の運営に不可欠な部分がカナダで行われていること。またカナダ国内で法人化されていること。 移民局が指定した投資団体からの支援書(Support Letter)を取得する必要がある。言語要件もあり、カナダの公用語である英語もしくはフランス語の言語能力試験(CELPIP、IELTS、TEF)でリスニング、リーディング、ライティング、スピーキングのすべてにおいて、一定の水準以上に達していることが求められる。
次に会社の設立方法についてみていこう。カナダで会社を設立する際は、まず連邦法人か州法人(その場合、どの州法に基づくか)を選択する必要がある。州法人(Provincial Corporation)は、カナダ各州の法人登記局に登録することで設立される法人。登記した州の管轄内でのみ営業活動を行うことが基本となり、その州での活動に特化したビジネスに適している。たとえば飲食業や小売業など、一定の地域内で完結するビジネスが向いており、州法人として設立することで、手続きや維持コストを抑えられることもメリットといえる。
なお、バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州は、カナダ非居住者でも投会社設立が比較的容易にできる州のひとつ。たとえば、ブリティッシュ・コロンビア州会社法では、会社の取締役がカナダ居住者であることは要求されず、全員が外国人でも設立が可能で、日本からも設立が多い州となっている。
一方、カナダ全土でのビジネス展開や、将来的に他地域での展開を想定している場合は、連邦法人(Federal Corporation)の設立が適している。連邦法人はカナダ政府に登録され、全国的な法人資格を持つため、複数の州で同時に営業活動を行う際に、法的安定性などの面からもメリットが多い。
以下、ブリティッシュ・コロンビア州で州法人を設立する場合をベースに、主な形態について解説していこう。
(1)株式会社
株主(メンバー)と区別される法人。「有限会社」とも。個人経営や共同経営との大きな違いは、会社の負債に対して株主や経営者個人が責任を負わないこと。ブリティッシュ・コロンビア州で設立された株式会社は、州の会社法に従わなければならない。また資本金に対する特別な制限がなく、発行する株式の総数及び金額が会社によって任意に決定される。株主は法人または自然人で最低1名必要だが、株主の国籍に制限はない。取締役は自然人で最低1名以上必要だが、先述の通り国籍を問わず、カナダ居住者である必要もない。
(2)合名会社
2人以上のパートナーが契約を締結し、共同出資して利益を出す形態。パートナーとは企業を共同で管理、経営し、各パートナーは発生した債務について個人責任を負う必要がある。
(3)個人事業主
自営業者ともいい、個人で事業を始めたい場合に選ばれる形態。Sole Proprietorship。個人事業の所有者としては、企業に関連するあらゆる債務について責任を負う。設立手続きが最も簡単で、設立時のコストも抑えられるのがメリット。初期段階のスモールビジネスに向いている。
バンクーバー篇の最終回となる次回は、現地でロングステイをしている日本人の生活をレポートしていこう。
参考資料:JETRO、Digima、VISA JP CANADA
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■ 4.「病」との対話
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現代社会において、「病」や「未病」は医者ではなく、自らと対話する必要があります。
しかし、向き合う方法は、そう簡単に理解できるものではありません。
先端医師や代替医療者の他では聞けない話を通じ、いかにして「病」や「自己の問題」と向き合えばいいのかを探ります。
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医療未来学者・医師 奥真也先生
第2回「大学から放り出され、医療ビジネスの裏側へ」
震災で福島のプロジェクトが消えた瞬間、奥先生は49歳で「戻る研究室も研究費もない医師」になった。東大にも無理して戻らず、あえて製薬の世界へ飛び込む。第2回では、大学から企業へと舞台を移した奥先生が、医療制度、薬事、ビジネスを横断しながら見抜いた「医療のもう一つの病」と、その経験が「医療未来学」の道につながるまでを追っていく。
【医療未来学者・医師 奥真也先生 2/4】
▼福島プロジェクト消滅と、49歳のキャリアリセット
Future Report研究員:招聘されて会津に行ったのに、そのポジションごと消えてしまったということですね。
奥:なかなか冗談みたいな経過ですよね。
Future Report研究員:その後、どうなさったんですか。
奥:ある日、学長に呼ばれて、こう告げられました。
「奥先生のテニュア審査(任期なしポジションへの昇格審査)は残念ながら不合格でした。新しく採用した教員は『3年ごとに審査を行う』決まりになっているので、そのルールを適用した結果です。半年後には教授としての契約を終了しなければならないので、そろそろお帰りいただく準備をお願いします」と。
Future Report研究員:つまり、招へいされた側なのに、仕事を与えられないまま契約終了になってしまったんですね。
奥:制度を逆手にとられて、結果的には「3年で切られた」という形ですね。あのときぼくは49歳でした。過去には、母国に籠りきりで日本に寄りつかない不良外国人教授が契約を切られた例があるだけ。
ここで一つ、構造的な背景が関わってきます。
医学系の研究というのは厚生労働省との距離がとても近く、特に東大などの大規模大学では、厚労省から「この研究をやってほしい」と依頼を受けて行う政策支援型の研究が数多くあります。
国の政策につながる研究を行う代わりに、研究費は安定して大学へ配分されます。
そんな関係性が、東大×厚労省、京大研究者x厚労省といった形でいくつも存在しているんです。
ぼくも東大を離れる直前までは、そうした「国のための研究」をいくつか担当していました。
Future Report研究員:医療の研究って、単に医学的テーマを追うだけじゃなく、国の施策との連携がセットなんですね。
奥:まさにそのとおりです。全部じゃないですが。ところが、福島での仕事は工学系のプロジェクトでしたから、予算の所管は厚労省ではなく文科省や経産省になる。
そこで、厚労省から東大関連で受けていた研究費は、医学部に残る先生方に「よかったら続けてください」とすべて引き継いで出ていったんです。
ある意味、きれいに縁を切って福島に向かったわけですね。
福島のポジションが消えたとき、ぼくには戻る研究室も、研究費も残っていませんでした。そのタイミングで、東大時代のメンターの先生からは「戻ってくるなら講師のポジションくらいなら用意できるよ」と声をかけてもらったりもしたんです。
Future Report研究員:普通なら、その道を選んでもおかしくないですよね。
奥:でも、ぼくは選びませんでした。自分でも少しフランス気質だと思うのですが、一度出た場所に出戻るという選択がどうしても受け入れられなかったんです。
そこで、あらためて自分のキャリアポートフォリオを点検してみました。
放射線科医として画像診断は十分に経験を積み、医療情報や医療制度にも深く関わってきた。ところが一つだけ、どうしても穴があると感じた分野がありました。
薬の世界、そして、薬事(PMDAなどと関係深い領域)への理解です。
放射線科医は内科医ほど頻繁に薬を処方するわけではないので、この領域はどうしても経験が薄くなる。医療全体を語ろうとするなら、この弱点は埋めておいたほうがいい。そう思ったんですね。
ちょうどその頃、ぼくは50歳になろうとしていました。まだ学び直してもよい年齢だと感じましたし、最終的に製薬会社へ入る道を選びました。
Future Report研究員:医療の「第三の領域」に踏み込む決断だったわけですね。
奥:大阪出身ということもあって、大阪に本社のあるバイオ医薬品会社に入りました。経営企画の仕事に、半ば無理やりねじ込んでもらったような形でした。
そのとき、ちょうどイギリス・レスター大学のMBAも取得していたので、医師免許に加えてMBAを持っていることが、企業にとっては採用の後押しになったのかもしれません。役員を務めていた知人がいたこともあり、その人に引っ張ってもらう形で入社しました。
ただし、最初から安泰だったわけではありません。
6月に内定、50歳で入社し、7月の初出社の日。机の上に契約書が置いてある。開いてみると半年間の契約社員と書かれていました。更新は「なし」と明記。つまり、保証されているのは半年だけという契約です。
Future Report研究員:それは……想像以上に不安なスタートですね。
奥:本当にその通りです。その時点で、9月には前職の任期が切れて完全に無職になることが決まっていましたし、下の子はまだ2歳。契約内容をじっくり吟味する余裕はありませんでした。事前に「契約書を送って確認しますか」とは聞かれ、多分メールは受け取っていた。
でも、返事するのでもなく、催促に、「当日で大丈夫です」と返していたんですね。そして当日渡された紙には、半年の契約社員、更新なしと書かれていた。
就職したつもりで来たのに、実態は「バイト契約」。
ショックでしたが、ここで引き下がるわけにはいかない。この半年はとにかく必死で働きました。
結果として、契約満了前に常勤(正社員)への切り替えが認められました。
ただ、今振り返っても、自分の能力がフルに評価されて勝ち取ったというより、多くの人に助けてもらって「なんとか残れた」という感覚のほうが強いです。
役員だった知人に引き上げてもらったことも含めて、いろんな縁に支えてもらった。
そして、その知人こそが、ぼくを常勤社員にしてくれた本人なのですが、そのわずか1か月後、会社を辞めてしまったんです。
Future Report研究員:えっ……そんなことが。
奥:人生というのは本当に予測不能ですよね。
もともと彼は、まったく別業界から呼ばれてきた「再生屋」で、会社の立て直しを期待されて入ってきた人でした。ただ、製薬側からすると「この再生屋さんの役目は3年でおしまい。いまは、あまり機能していない、もう要らないな」とか判断されたようで、在籍わずか3年半で見切りをつけられたんです。ぼくよりちょっと早く入社していましたが、もともと「自分はいずれ切られる」と本人も薄々感じていたと思います。別の言い方をすると、そういう働き方、ということ。
それでも、彼は自分が誘った形になっている僕だけは守ろうと考えてくれたのでしょう。そう思えるだけの確信があります。
だからこそ、ぎりぎりのタイミングで常勤に切り替えてくれたのだと思っています。結果として、ぼくはその会社に3年ほど在籍することができました。
この領域は、医師で、ビジネスやレギュラトリーにもある程度精通している人材はとにかく数が少ないんです。
ひとたびそこに立つと、仕事の声が驚くほど来るんです。
当時は週に1回はヘッドハンティングの連絡がありました。他の人に聞いてもだいたい似たような状況のようです。
そうした声に応える中で、最初に入社したバイエル薬品を皮切りに、合計4社を渡り歩くことになりました。先ほど話に出た、スペインによく通うことになった会社もその1つです。
Future Report研究員:4社とも製薬系だったんですか?
奥:製薬系は2社ですね。最初はバイエル製薬。その後、東京へ戻る必要が出てきて、薬事コンサル会社に移りました。
当時、いちばん下の子がまだ小さくて、ある日、「パパは近くにいてほしい」と言われたんです。いまの彼女からは想像もできない発言ですが。
それもあって、とにかく東京に戻りたかった。
そこで入ったのが、海外製薬企業の日本参入を支援する薬事コンサル会社でした。
日本に支社のない外資メーカーをPMDAに連れていき、審査に同席してやり取りをサポートする仕事です。PMDAの担当官は、とても丁寧に「この薬は有望だと思います。日本の患者さんにも価値があります」といった言い方をするのですが、実際の意味は「これはたぶん承認できません」。
ところがクライアントは表面的な意味しか分からないので、「ポジティブなディスカッションだったよね!」と本気で喜んでしまう。
それに対して「いえ、いまのは日本流『ごめんなさい、お断り』です」と説明する、そんな仕事でした。
その会社は東京にある薬事コンサル会社で、当時は大手グループの傘下に入っていました。
創業者はアメリカ人で日本語も堪能だったのですが、かなり独特な経営感覚を持っていて、社内でも「クセが強い」と評判でした。
フィリピンに会社をつくって、日本人の第I相試験(健康成人ボランティアを対象とした治験)をフィリピンで実施する事業を始めました。
彼は1年のうち2か月くらいをフィリピンで過ごして、「ものすごく忙しくしている」という顔をしていた。
でも後になって、親会社がその会社を売る際の社内レビューで分かったのは、そのビジネスは上手く行ってなかった。ある意味リゾート気分の事業だったという判断に。
Future Report研究員:良くないですよね、それは……。
奥:そんな経緯もあって、だんだん消耗し、自分としては「この会社に長くいるのは違うな」と感じるようになったんです。
Future Report研究員:やめてしまわれたわけですね。
奥:ぼくは比較的すぐに辞めました。
そのあと転職したのが医療機器の会社、エドワーズ・ライフサイエンスです。
ここは、大動脈弁狭窄症の治療を開発したことで有名な会社で、カテーテルで人工弁を運び、心臓の中で拡げて弁を置き換える「TAVI(タビ)」という治療法を開発した会社です。
大動脈弁のほか、将来的には僧帽弁など、より患者数の多い疾患にも広げていきたいということで、その領域を担当できるメディカルドクターを探していました。
事業としても非常に成長途上で面白そうだったし、飽き性な私には薬事交渉一本は退屈だったこともありました。
「良いチャンスは活かしたい」と思って、エドワーズに移りました。
Future Report研究員:その時点では、まだ「医療の未来」みたいなテーマは始まっていないんですか。
奥:まだ形にはなっていませんでした。ただ、エドワーズに移った頃には、臨床だけではなく、薬事や医療機器を含めた「医療全体」がようやく見えるようになってきていました。放射線科で画像を扱ってきた経験に、製薬側やレギュラトリーの視点が重なってきた時期です。
Future Report研究員:いろんな世界が一気につながってきた感じなんですね。
奥:そうですね、まさにそんなノリです。その頃、高校の同級生が、広告業界でクリエイターとして大活躍してたんです。彼はすでに亡くなっていますが、プレイステーションのCMや飲料メーカーのキャンペーンを主導した伝説の人でした。彼と、よく恵比寿あたりのバーで飲んでいた。そのときに何気なく「人はもう、死ねない時代になるよね」とつぶやいたんですね。
Future Report研究員:えっ、その一言がきっかけに?
奥:彼が「それはおもしろい、絶対本にしたほうがいい」と背中を押してくれた。それが著作活動の最初の「種」になりました。
最初は「自分が知っていることなんて、医師ならだれでも知っているだろう」と思っていました。でも冷静に考えてみると、臨床経験があって、製薬企業の事情も知っていて、さらに医療情報、医療制度、薬事、医療機器まで横断している。そういう医師は意外と少ないんです。
しかも、ぼくは専門の一点に潜るタイプではなく、わりと俯瞰して見るところがある。そういう人間が語る「全体像」には、確かに価値があるのかもしれない、と思うようになりました。
Future Report研究員:専門を横断できる人って、本当に少ないですもんね。
奥:製薬会社にいると、自分の専門とまったく関係ない領域──たとえば眼科の薬など──も担当する必要があるんです。そのおかげで「幅としての医療」を理解し、それを言語化できるようになった。この経験が、本を書くときにもすごく役に立ちました。
そうして最初の本を書いたのが2019年でした。
タイトルは、例の友人がつけてくれたものです。
書籍として爆発的に売れたわけではありません。でも出版の世界では、「どれだけ売れたか」と同じくらい、「どんな世界観の本か」が重要なんです。実際、この本をきっかけに取材や執筆の依頼が一気に増えました。
そこで、依頼を整理するためにエージェントに入ってもらい、本づくりの流れができていった。そのなかで、『医療の未来』のシリーズも生まれていきました。
さらに、本の企画や構成を専門にする会社と出会ったので、そこにサポートしてもらいながら、企画を形にしていきました。
Future Report研究員:ここから「医療未来学者」という肩書きになるんですね。
奥:そうですね。講談社現代新書の本を出すとき、所属をどうするか、と。社名や大学メールとかを書かないと収まりが悪いんですよね。
当時、まだ製薬会社に所属していましたから、会社名を書くと内容との整合性が難しいし、そもそも出版の許可が出ない可能性もありました。
兼業申請はしていたんですが、「肩書きに会社名を書くかどうか」というのは別問題で、そこはクリアできなかった。そこで、所属を書かない代わりに、自分で自分の肩書きをつくることにした。
それが「医療未来学者」です。
自認としてはその名はあったんですが、活字として正式に使ったのは講談社の本から。「じゃあ、この本を『医療未来学者』の肩書きの正式採用の場にしよう」と決めました。
(つづく)
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■ 5.大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
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テクノロジーの進化や高速ネットワークにより爆発する「大ビジュアルコミュニケーション時代」。
その時代を生き抜くため、必要なカメラの基礎知識や静止画・動画製作のコツ、そしてAIの使い方についてイチから学びます。
英語力に国際感覚、最低限のITスキルや自己の健康マネージメントに加え、ビジュアルコミュニケーション能力も高めましょう!
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SCENE:102 RAW現像
前回はセレクトの仕方についてお伝えしましたが、その後は選んだ作品を仕上げる段階へと移ります。
それがRAW現像です。
一般にスマホでは行われない作業ですが、この現像を実施することで撮影した作品をより理想へと近づけることができます。
◆RAW現像とは
SCENE:22「写真の保存形式」で解説した通り、デジタル一眼カメラで記録した画像はJPEGやRAWという画像フォーマットのいずれか、または両方で記録されます。
JPEGは非常に汎用性の高いフォーマットで融通が効くものの、非可逆圧縮であることからサイズ縮小や画像劣化をしてしまうと元に戻せません。
一方、RAWはカメラ内部のイメージセンサーが受け取ったデータそのものを記録する(生データ)フォーマットで、非常に大きなデータサイズになってしまうものの豊かな階調が記録され、デジタル一眼カメラが持つポテンシャルを発揮できます。
そのため、本連載ではRAW形式での撮影を強くおすすめしてきました。
しかし、このRAWデータは「まだ調理されていない食材」のようなもの。
各種パラメータを調節する現像という調理を経る必要があります。
また、RAWそのものを表示できるソフトは非常に限られるため、JPEGやTIFFなどへ出力して、「人前へ出せる状態」にする必要もあるのです。
撮影した作品をすぐに閲覧する、他人へと共有するという、いわゆる「撮って出し」に慣れた側からすると、RAWでの撮影および現像は面倒に感じるかもしれません。
しかし、そのひと手間が加わることで、「ビジュアルコミュニケーション」ツールとしての表現力は格段に高まるのです。
この現像作業は、パソコンの専用ソフトで行います。
カメラメーカーは自社のRAWデータを取り扱える純正ソフトを無料で用意しており、ソニーの「Imaging Edge」、キヤノンの「Digital Photo Professional」、ニコンの「NX Studio」がそれに該当します。
これら純正ソフトはメーカーの色を忠実に再現でき、手軽さも魅力ですが、より自由な作品づくりを意識するのならば、「Lightroom」や「Capture One」といった専用ソフトを選ぶのもいいでしょう。
これらの専用ソフトは調整できる範囲が広く、階調や色を細部まで追い込めるため、RAWデータの潜在力を最大限に引き出せます。
さらに部分補正やトーンカーブ、HSLなど、写真表現に直結する機能が充実し、作風づくりにも向いていますし、大量の写真管理やセレクトがスムーズに行えるなどワークフローにおける強みも持ち、プロの間で愛用されています。
◆RAW現像のプロセス
RAW現像には多くの調整項目があり、仕上げるまでの手順は人それぞれです。
以下は、基本的なプロセスを解説します。
1)ヒストグラムを確認する
まずは写真の明度の分布状態を示すヒストグラムを見て、「健康状態チェック」を把握しましょう。
左端に触れていれば黒つぶれが、右端に触れていれば白飛びが発生している可能性があります。
想像以上に偏重していれば「ヒストグラムの山の形を真ん中に寄せる意識」を持ち、以降の作業へ移ります。
2)露出(明るさ)を整える
まず触るべきは露出です。
露出スライダーを左右に動かすと、ヒストグラムも同時に移動します。
暗い写真は明るく、明るすぎる写真は少し下げ、「見た目として自然に感じる明るさ」まで調整しましょう。
3)ホワイトバランスで光の色を決める
明るさが整ったら、次は光の色そのものを調整します。
色温度を上げると暖かい写真に、色温度を下げると涼しい写真へというように、ホワイトバランスを変えると写真の空気感や温度が一気に変わります。
イメージに合う色合いに近づけてください。
4)ハイライトとシャドウで階調を整える
RAWの強みは、明るい部分や暗い部分の階調を後から救い出せる点にあります。
明るいハイライトと濃厚な影を適切に見せることで全体が引き締まり、より印象的な写真に仕上がります。
またハイライトを下げると明るい部分のディテールが戻り、シャドウを上げると暗いところから情報が戻ります。
上げすぎや下げすぎに注意しつつ、調節してください。
5)HSLで色だけを部分的に整える
HSLとは、色相・彩度・輝度のこと。
赤の輝度や色相を少し下げて肌の赤みを取る、青の彩度だけ上げて青空をより濃くするといった調整を行います。
6)トーンカーブで写真の雰囲気を決める
明るさやコントラスト、色合いを細かく調整できるのがトーンカーブです。
横軸(入力)が元の明るさ、縦軸(出力)が調整後の明るさを表示。
グラフ上の線は自由に動かすことができ、持ち上げれば全体が明るく、下げれば全体が暗くなります。
この線をS字カーブにすれば光と影にメリハリが出て作品が立体的に仕上がり、逆にS字を緩めると、ふんわりとした柔らかい印象になります。
6)仕上げ
最後に仕上げです。
ノイズ除去を加えることで、高感度で撮った際に入りやすいノイズを抑制できます。
また、シャープネスを強めることで輪郭などがくっきり描けるようになります。
この段階で細部の質感を整え、全体をまとめましょう。
現像作業では撮影した写真の仕上がりを自在にアレンジでき、当初は色々試してみたくなることでしょう。
その経験はビジュアル表現への理解を深めたり、注意すべき撮り方を身につけたりすることにつながり、スキル向上に大きく貢献します。
ただ気をつけたいのは、現像自体はSNSアプリのフィルターやデコレーション機能のように“盛る”ものではないということです。
派手な演出に心を寄せるのではなく、カメラを通して何を記録し、どのような世界を描きたいのかを明確化して、それを伝えるために現像作業に取り組みましょう。
(つづく)
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■ 6.Q&Aコーナー
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!! 高城未来研究所への質問募集 !!
高城未来研究所へのご意見、ご要望、質問などを募集します。
頂いた質問は、毎週メルマガ本文中で回答します。
高城未来研究所に答えて欲しいことがある方は、
qa@takashiro.com
まで、どしどしご連絡ください。
(400文字以内 / お一人様毎月一問まで)
*全ての質問に必ずしも答えられるわけではありませんので事前にご了承ください。
*ご質問を頂いた週のメルマガではなく、翌週以降のメルマガでお答えする場合も多くございます。
*渡航に関するご質問も多数頂戴しております。スケジュールがお決まりの方は、お早めにご質問を頂戴できますと幸いです。
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▽Q.1▼▽
8weeks AI 3期生です。
元々、大の甘党でしたが糖を欲した時はナッツを食べる事によりケトン体維持が出来るようになりました。感謝しております。
年末にフィリピンに行くのでPili nutsを買いに行こうと思ってます。
調べてみると栄養価も高くケトン体維持に向いているみたいですが、高城さんはPili nutsを食された事はありますか?
【 A 】
以前、フィリピン滞在時にいわゆる「Pili nuts」を食べまくりましたが、生産と管理が悪く、カビ毒の塊でした、、、、。
その後、8weeksストアでアーモンドを売り始める時にもテスト機関に出して再確認しましたが、燦々たるものでした。
結果、イタリアの古代農法で作る完全天日干しのジェンコ種に行き着いたのです。
世界中まわって調べましたが、どこよりも「栄養価も高くケトン体維持に向いて」おり、カビなしでシュウ酸値もとても低い。
ご期待に添えず、すみません。
▽Q.2▼▽
先日「仙豆」を購入し、その効果に驚きました!
愛用したいと思います。
サバイバルポケットに忍ばせ、日々精進します。
質問です。
私には5歳の娘がいますが、先日耳鼻科で「アデノイド肥大」の可能性がある、との診断を受けました。
思えば小さいころから口が開きがちで、慢性的に鼻詰まりもあり、いびきもしています。
医師からは手術で切除することも検討すべきと言われていますが、絶対に手術をした方がいいというものでもないようなので、他に良くなる方法がないのかなと考えております。
実は私自身が小麦アレルギーのようで、食べてしまうと翌日は鼻炎の症状がひどくなります。
娘もその可能性があるようにも考えておりますが、以前お世話になった神宮前統合医療クリニックでは、遅延型フードアレルギー検査は18歳以上が対象とのことで検査不可でした。
自宅近くで通常のフードアレルギー検査は行おうと思います。
アデノイド肥大について、親としてできることはどのようなことでしょうか?
【 A 】
国際的な耳鼻咽喉科学会による最新の論調では、アデノイド肥大は単一原因ではなく、慢性的炎症の蓄積によって増大するとされています。
まず、アレルギー性鼻炎(特にダニ・花粉・食物による慢性粘膜炎症)、 鼻閉(鼻詰まり)による慢性的口呼吸、ウイルス感染の反復(RSV、アデノウイルス、ライノウイルス等)、上咽頭炎(Bスポット領域の慢性炎症)、睡眠時無呼吸の補償反応、遺伝的素因(鼻腔形態・免疫応答)などです。
学会では、アデノイドそのものを切る前に、炎症源を体系的に減らすことが極めて重要視されています。
また、遅延型フードアレルギー検査(IgGベース)ではなく、総合的な遺伝子検査やIgE媒介アレルギー、非IgE媒介アレルギー検査なら5歳でも受診可能です。
ちなみに、食事はどうでしょうか?
特にヒスタミン除去は徹底したほうがいいでしょうし、他にも炎症を誘発する(遺伝子的にあってない)食事は一度やめるべきです。
これが「親としてできること」であり、この結果次第で判断なさったほうがいいでしょう。
手術は最終ステップです。
なぜなら、自然縮小(7~9歳以降)が起きる臓器であることを考えると、5歳は慎重に判断すべき年齢であるというのが最新の推奨だからです。
まずは、食事の徹底を!
▽Q.3▼▽
一年ほど前に、このメールマガジンで質問させていただき、資産分散に「金などのタンジブル(現物資産)も入れた方がいい」とアドバイスいただいた者です。
その後、金は高騰しまして、少しだけ売却し利益が出ました。本当にありがとうございます。
海外旅行や外食にも使いましたが、この資金をできるだけ有効に使いたいと思っています。
そこで、前回申し込めなかったノマドアカデミーを通じて、精密栄養学とAIの知識を貯め、マイクロ事業に進みたいと思っていますが、次回のノマドアカデミー募集は、いつ頃になるのでしょうか?
【 A 】
投資に資金がいるように、マイクロ事業には仕入れが必要です。
そこで、もっともリスクが低いのが、自己投資による知見を溜め、それをマネタイズすることだと思います。
過去10年、Youtubeを見てもおわかりのように、ミラーレスカメラやスマートフォン、ドローンなどを使って、動画制作ノウハウを貯めてマネタイズするのが大きく躍進したのと同様、次はAIとヘルスケア産業、さらにはそのふたつの融合によって生み出される「人類最後の知財」が、これから十年、大きく伸びる上と考えます。
なにより、この仕事は場所に囚われません。
そこで、ノマドアカデミーをスタートしました。
まだ、開催から一年も経っておりませんが、同様のご要望を多々頂戴しておりますので、来年早々に第二次募集を開催する予定です。
2年ほどしっかり学べば、どなたでもそれなりに稼げるように設計しておりますので、ぜひ次の機会を見逃しなく。
一度頭に入れたものは暴落することも失うこともありませんので。
▽Q.4▼▽
以前、「プラントバラドックス」や「汚れた遺伝子」など医療系の面白い本をご紹介いただきました。
最近、医療や健康系で高城さんが興味深いと思った本があれば、教えていただけないでしょうか?
年末年始に読破したいと思います。
【 A 】
Sally K. Nortonの「Toxic Superfoods: How Oxalate Overload Is Making You Sick--and How to Get Better」は、いかがでしょうか?(www.amazon.co.jp/dp/B09BTM7QS7)。
30年以上にわたり重度の慢性疾患に苦しんだ著者自身が、さまざまな食事法(ビーガン、ローフード、パレオなど)を試した末に、食事中のシュウ酸が主犯だと気づき、低シュウ酸食に切り替えて劇的に回復した体験談がベースになっています。
健康のために食べているスーパーフード(ほうれん草、アーモンド、甜菜、キヌア、サツマイモ、ダークチョコレート、ベリー類など)が、実は高濃度のシュウ酸を大量に含んでいて、それが慢性疲労、関節痛、腎結石、自己免疫疾患、脳霧、うつ、不安障害、腎臓障害などの原因になっていたと論じる一冊です。
全員に当てはまるわけではありませんが、遺伝的に吸収されやすい体質の人にとって、これらの食品は大問題です!
思い当たる節あれば、ご一読くださいませ。
▽Q.5▼▽
少し前までGoogleはAIで遅れていましたが、いまやGeminiで巻き返したと思います。
この秘訣は何だと思いますか?
やはりTPUが大きいでしょうか?
また、今後生成AIの争いや覇権はどうなっていくと思いますか?
【 A 】
Geminiは、画像生成とベンチマークの数値は素晴らしいですが、実務的はまだまだだと思いますよ。
なにしろ、モデルは年々急速に分岐しているからです。
ただし、TPUはAI時代に支配的だったNVIDIAの牙城を崩し、いち早く循環取引から抜け出そうとしています。
ちなみに、現段階で僕がトータルで一番使っているのは、TrainiumとOpus4.5の組み合わせです。
僕の時流では無いものがいつも好きになる嗜好もあるのですが、コーディング(特にバックエンドAPI)もデザインもTPU+Gemini3.0ではなく、TrainiumとOpus4.5を使います。
次にGrokです。
月額料金が高いのですが、Grokが面白いのは全AI企業のなかで、ロボットや自動車等で唯一現実世界の接点を多く持つリアルワールドデータを集められる点です。
ですので、今のうちに慣れておきたい思いもあって、頻繁に使って独特の癖を理解しています。
「また、今後生成AIの争いや覇権」は、どちらにしろ、CUDAエコシステムが、独占的地位を失うでしょう。
どこかで、XLA:TPUコンパイラのオープンソース化に向かうでしょうからね。
多分GoogleはMetaとその取引を始めていると思います。
敵に「塩」ならぬ「アクセラレータ」を送る感じです。
ちなみに、何度かお伝えしますように、AI企業の鍵は電力です。
そのため、各社サウジアラビアに近寄ったり、宇宙にデータセンター作ろうとしたり、小型原発会社に多大な投資と契約を結んだりしており、結局、あらゆる「戦争」はエネルギー次第なんです。
つまり「今後生成AIの争いや覇権」の本当の戦いは、電力次第。
そして今後、個人の生存戦略もエネルギーとの距離感が重要になります。
水はフィルタリングできても、また食事は節制できても、最低限の電気は作るしかありませんからね。
▽Q.6▼▽
高城さんの以前の著書を何冊か読んで、このメルマガに辿り着いた28歳女性です。
これから世界は、寒冷化するのでしょうか?
暑い夏を考えるとそう思えませんが、実際のところどうなのでしょう?
【 A 】
自著に記載しましたように、定期的に地球が太陽に近づいて温暖化したあと、徐々に太陽から離れるに従って寒冷化や小氷期に入ります。
しかし、この宇宙気候変動より、地球の都市開発の速度が早すぎます。
これによって、グチャグチャな気候になってしまっているのが現在です。
一方、地球温暖化によって加速された2つの異なる気候メカニズムが、パラドックス的に地球を氷河期のような状態に陥れる可能性があると今年発表され、欧州、特に北欧で大問題になりました。
アイスランド政府は、大西洋子午面循環(AMOC)=メキシコ湾流などを含む海流系の崩壊の可能性を国家安全保障上の脅威かつ「存在的」リスクと宣言しました。
この指定は、アイスランドの気候大臣ヨハン・パル・ヨハンソンにより発表され、気候関連事象が正式にアイスランド国家安全保障会議に提出されたのは初めての事態となります。
AMOCは暖かい熱帯の海水を北方に運び、ヨーロッパの冬を穏やかに保つ役割を果たしていますが、温暖化によりグリーンランドの氷床からの融水が北大西洋に冷たい淡水を増加させ、海流の流れを乱す可能性があると警告しています。
また、ドイツ・ポツダム気候影響研究所の海洋学者ステファン・ラームストーフは、「転換点はかなり近いかもしれない」と警告しています。
同研究所が今年8月に発表した研究によりますと、北大西洋の主要海域の転換点は「今後数十年のうちに発生する」と発表され、その後、自己強化フィードバックにより停止が不可避となると論じています。
さらに、今年9月にScience誌で発表されたカリフォルニア大学リバーサイド校とブレーメン大学の研究者の論文では、地球の炭素循環が、大気中の過剰な二酸化炭素を除去する暴走的な藻類ブルームを通じて、温暖化を過剰に補正する可能性があることを明らかにしました。
研究のコンピューターモデルでは、これが氷河期を引き起こす可能性があり、このプロセスが次の氷河期を数万年または数十万年早める一方、現在の温暖化からの救済にはならないと強調しています。
もう二十年近く、気候変動に関する論文に目を配っていますが、正直、なにが起きるかわかりません。
もはや「大自然と僕らが呼んでいる地球のOS」は、壊れてしまったと考えた方がいいでしょう。
特に自然が豊かだった「日本の自然OS」の反動は、今後大きいと誰もが覚悟する必要あると思います。
▽Q.7▼▽
高城さんはスペインの永住権をお持ちですか。
お持ちの場合は「2年間のうち、EUに18ヶ月以上不在」という条件をクリアし続けて、永住権を保持し続けるご予定でしょうか。
【 A 】
僕はスペインで発行された「EUの永住権」を取得しています。
また、いままで同様「2年間のうち、EUに18ヶ月以上不在」という条件をクリアせず、永住権を保持し続ける予定です。
なぜなら、AIにいくら聞いても出てこない方法は山のようにあるからです。
本当に大事な情報は、インターネット上にはない、とAIとインターネットにそれなりに長けていると自負する僕が断言します。
良質な口コミは、絶対にバズらないのです。
▽Q.8▼▽
高城さん、率直な疑問です。
何故、高城さんほどに興味深くて、惹きつけられ、圧倒され、優しさと同時に日本人としての粋も感じさせてくれる素晴らしいお方が、一般にもっと知れ渡らないのか、長年不思議で仕方ありません。
周りには、人を選んで、時にその魅力を伝えようとするのですが、何ともピンと来ない反応ばかりで、いつももどかしい限りです。
なるべく目立たないようにされているとのことですが、それにしたって納得がいきません!
私がおかしいのでしょうか?
それとも、世間がおかしいのでしょうか?
はたまた、高城さんと我々読者は違うレイヤーか何かを彷徨っているのでしょうか。
【 A 】
過大評価頂くのは恥ずかしい限りですが、もう15年以上前にリリースした自著にも書きましたように、僕はイノベーターのなかのイノベーターだけに、読者を限定しています。
仮に日本の労働人口の2.5%のなかの2.5%と定義すると、およそ2万人から4万人程度です。
この方たちだけに限り、メールマガジンや書籍、映画やアパレル、そして各種サービスをお届けしているつもりです。
また、自らの力で僕を発見できる方は、それなりのアンテナをお持ちです。
そう信じて、そのような感性や感受性が高い人たちのために、僕の経験をお伝えし、少しでもお役に立てたらと日々考えています。
ただし、「それなりのアンテナをお持ち」で、「感性や感受性が高い人たち」は、身体的および社会的問題をお抱えの方があまりに多い。
本来は「才能」なのでしょうが、それを活かせる環境もツールもありません。
それを支援するため、60歳を機に8weeks.aiやノマドアカデミーをはじめました。
僕自身、年齢を考えても、長年ご支援いただいた皆様にお伝えできる時間も限られてきました。
そこで直接お目にかかりたいと考え、クリニックやノマドアカデミーバルセロナ校、そしていよいよ来年には米国で数泊するサイケデリックサマーキャンプを開催予定です。
拡散ではなく深度へ!
▽Q.9▼▽
火星へ移住する長期計画はありますか?
【 A 】
僕は外宇宙ではなく、内宇宙にずっと興味があるんです。
外宇宙は人類の身体的限界があるので遠出できませんが、おそらく内宇宙への旅は、外宇宙の深淵につながっているはずです。
「長期計画」では、そちらでしょうね。
大体、火星面白そうじゃないし。
▽Q.10▼▽
現在、32歳です。
このメールマガジンのアドバイスに従い、それなりの資産ができましたので、会社を辞めてしばらく旅して暮らそうと思っています。
質問です。
高城さんは、AirB&Bのようなところにも泊まるのでしょうか。
【 A 】
頻繁に泊まりますよ。
先週もオレゴンに滞在しましたが、すべてAirB&Bでした。
見知らぬアメリカ人との会話は、米国社会の現状や日本を客観的に教えてくれる良い時間で、先日お目にかかった老夫婦曰く、日本旅行で素晴らしかったのは「熊野古道」を数日かけて歩いたことだった、とのことでした。
右傾化進む日本ですが、「熊野古道」を制覇したかどうかで、各人の本気度を感じるのでしょうし、「大峯奥駈道」もあわせて尋ねると、日本の精神的支柱の有無がわかると思います。
観光地の富士山ではありません。
▽Q.11▼▽
一般人レベルで日本人にとって中国人が脅威になることは考えられるのでしょうか?
国家総動員法により、在日中国人や帰化人が敵となる可能性があります。
しかし、監視社会国家であり、中国人自体が中国政府を警戒しており本音が分かりません。
また、中国政府は日本に中国人移民を送りこみ、将来的に日本を中国の自治区とする未来も見据えているように思えます。
現状ではイザコザがありますが、中長期的にどうなるのか見解をお願いします。
【 A 】
一番の脅威は、中国に限らず、他国の経済植民地になることですよね。
我々日本人も、つい15年前ぐらいまで、近隣のグアムやサイパンを経済植民地にしてきました。
気候が良くて、物価が安ければ、そうなります。
一般的には沖縄や北海道を想起するのでしょうが、大阪万博の跡地にできるIRは、他国の経済植民地する前提で設計されています、内緒ですけど。
その露払いとして、インフラ整備するために税金を使って万博を誘致したのです。
もう十年以上前に、米国の大手カジノの日本進出を手伝っていた僕自身の経験からも明らかです。
円安が続けば、経済植民地は増え続けるでしょう。
▽Q.12▼▽
いつも様々な知見をご教示くださりありがとうございます。
日本は、海外より物価が安いということですが、高城さんは商品を販売する時の「価格」をどのように決められているのでしょうか。
知覚価値など想定され、(勿論)高めに設定されているのでしょうか。
価格の決め方のポイントや売れる価格設定の仕方などありましたらご教示いただきたいです。
【 A 】
実は、僕が「商品を販売する時の」値付けは、そこまで深く考えていません。
正直、世界を回った体感に近いものです。
例えば、スペシャルティコーヒーを販売するとしましょう。
多くの人は、原価や人件費、家賃、時には気分などから「価格」を決めるのでしょうが、一番大切なのは、インターコンチネンタル取引所(ICE)の「Coffee C」の「価格」です。
つまり、コーヒーの「価格の決め方のポイント」は、「Coffee C」が出発点です。
次にマーカンタイルと気候です。
これを体感的に理解してないと、持続可能なビジネスになりません。
また、この時代の価格決定における唯一の正解はダイナミックプライシングでしょう。
世の中、流動的ですからね。
▽Q.13▼▽
以前、医薬品卸からのキャリアについて相談させていただいた31歳の男性です。
その節はアドバイスをいただき、ありがとうございました。
おかげさまで7年勤めた卸を退職し、今年コントラクトMRへの転職を果たすことができました。
生活の基盤を整えた今、次は以前から志していた「予防医療」の分野で個人の事業を持ちたいと考え、覚悟を決めて「8weeks.ai プロ版」に登録いたしました。
MRという職業柄、法律やコンプライアンスに触れるため本業ではこの知識を活用できませんが、その分、組織に属さない個人としての活動で、精密栄養学を用いた健康への貢献をしたいと強く願っております。
現在は顧客ゼロ、知識もこれからという段階です。
まずは自ら実践し知識をつけることが大前提ですが、今後、私のような「看板のない個人」がゼロから最初の顧客を獲得し、利益を生み出す事業へと成長させるために、どのような視点や行動が必要だと思われますでしょうか。
高城さんの視点からアドバイスをいただければ幸いです。
【 A 】
8weeks.aiプロ版の最低人数を8人に設定したのは、ご当人の他、奥様、お子さん二人、ご夫婦のご両親4名の総数で考えました。
本当に身近にいる人たちの健康管理を、なによりも大切にしてほしいという思いなんです。
もし、独身であれば、ご両親やご兄弟、最低限の信頼できる友人などの数でもあります。
どうか「利益を生み出す事業へと成長させる」前に、これをお考えください。
なぜなら、少なからずもこれらの関係性には、この仕事で最も大切な「本気の思いやり」があるからです。
彼らは「顧客」ではありません。
貴君が自身のお金を支払ってでも、健康を守らねばならない人たちのはずです。
このような意識を持てなければ、「顧客」の和は広がりません。
これが「視点や行動」であり、僕からの第一の「アドバイス」です。
どうか、出発点をお間違えなく。
▽Q.14▼▽
「リピーターのためのディープ・バルセロナガイド」出版する予定はありますか?
非常に楽しみに待っております!
【 A 】
長年、食に特化した「ディープ・バルセロナガイド」を書きたいと思ってまして、この夏も散々飲食店をまわり「出版する予定」はあるのですが、まだまだ未定です。
たぶんですが、最低でももう一年はかかると思いますので、早くて再来年じゃないでしょうか。
多くの皆さんが旅行に行かれる2027年の夏前までには、出したいところです(まだまだ予定ですけど)。
▽Q.15▼▽
気がつくと今年も終わりです。
ズバリ、高城さんが選ぶ今年の一曲は?
【 A 】
ズバリ、「今年の一曲」は、なんといってもHUNTER/Xの「Golden」だと思います。
世界中の街角で一番聴き、今年のハロウィンでもダントツ人気。
アナ雪の「Let it go」から「Golden」が世界を席巻するのに、わずか十年ちょっとです。
世界は急速に変わりました(ので、歪みが起きています)。
この曲とアニメ映画は、時代らしく移民や社会に馴染めない若年層のアイデンティティ・クライシスとシャーマニズムが、上手く表現されています。
鬼滅もディズニーもBLACK PINKもテイラー・スイフトも超え、仮想現実が主軸になる世界。
なぜなら、そここそが彼女(と彼ら)の心の拠り所だからです。
▽Q.16▼▽
間もなく定年退職を迎える59歳の男です。
自由に使える時間が増えるので、8weeksやNomad Academyで得られた知見をもとに心身を整えつつ、物語や音楽の創造に挑戦したいと思っています。
さて、質問ですが、読むこと自体、聴くこと自体、あるいは観ること自体が瞑想体験になる本、音楽、映画といったものはあると思われますでしょうか?
もちろん、個人による感じ方の差はあるでしょうし、どのような条件や環境の下で読んだり聴いたりするかによるとは思うのですが。
なお、ここで「瞑想体験になる」という言葉は「坐禅の代わりになる」「悟りにつながる」といった意味で使っております。
【 A 】
ドローンやアンビエントなどの音楽を聴きながら編み物を編むことだと思います。
実は単なる音楽を聴くだけでなく、編み物のような反復的な手作業によって思考のノイズが静まり、その上で一定のテンポをもった音楽が脳波を整え、自然に坐禅に近い状態へ移行することが医学的に判明しています。
以前もお伝えしましたが、反復運動がデフォルトモードネットワークの活動を穏やかにし、雑念の生成を抑えるのです。
また、一定の揺らぎと持続を持つ音像は、脳波をα波やθ波へ導く作用があり、これは瞑想時に観測される脳波のパターンとほぼ重なります。
つまり、外側から入ってくる刺激が過剰に物語を要求しないもの、すなわち余白や間を大切にした作品は、内側の世界へ自然に降りていく導入装置として機能します。
よかったらお試しください、できれば暖かい時期のサンセット時に、外で風に吹かれながら。
▽Q.17▼
高城メルマガの創刊号からの読者で、信者かもと時々思う現在中米在住のシェフです。
高城さんのおかげでたくさんの新しい価値観と哲学に出会いました。ありがとうございます。
さて、ドゥルーズ=ガタリの「ノマド」は、単なる移動者ではなく、国家装置の外部から文化の流動を生み出す“戦争機械”として描かれます。
しかし現代の多くのクリエイターは、SNSやAIの領土内で“移動風の定住”を繰り返し、実際には国家装置の内部で最適化されているだけに見えます。
この意味で、真のノマドはほとんど絶滅危惧種なのではないでしょうか?(スノーデン?ラースフォントリアー?)
また、高城さんご自身は「国家装置の外側に立つノマド」なのか、あるいは「外縁を高速に回遊しながら国家装置を観測する別種の存在」なのか、どのように自己規定されているのかを伺いたいです。
クリエイターがこれから目指すべき“ノマドの位置”は、どこにあるのでしょうか?
【 A 】
ご質問にありますドゥルーズ=ガタリにおける「ノマド」は、SNS時代に濫用されている「移動しながら働く人」とは、まったく別の存在です。
あの概念は、移動そのものの形態よりも、むしろ「国家装置が定義する座標軸に乗らない思考と生産」を意味しています。
国家の管理・計測・最適化の網にかからず、外部から流動をつくり、その流動そのものが制度に回収され得ない点に本質があります。
ところが現代のクリエイターやノマド風情の多くは、外部にいるつもりでも、実際には内部のオペレーションに巻き込まれています。
SNSもAIも、構造的にはきわめて強力な「内在的国家装置」であり、自己の可視性・評価・市場性を最適化する限り、そのプラットフォームの上に「移動風の定住」を営むことになります。
実際、多くの人がそこで迷い、消耗し、本来の創造性はアルゴリズムの地平の中に回収されていきます。
では、真のノマドは絶滅危惧なのか。
僕は、半分だけその通りだと思います。
ただし、完全には消えていません。
スノーデンのように国家性そのものを暴露した個人、ラース・フォン・トリアーのように作品体系を市場の規格から切断し続ける作家、あるいは各地に点在する名もなき実験者たち。
彼らは地理的移動よりも「認識論的移動」を行っており、その点で現代でもなおノマド的戦争機械は生き残っています。
では、僕自身は何者なのか。
自己規定は難しいのですが、強いて言えば「国家装置の外部に立つ」というよりも、「外縁を高速に巡り、複数の装置の重ね合わせを相対化する存在」に近いと思っています。
国家も市場も文化も、単一の装置として見ないほうが実態に近い。
むしろ、それらが交差し、継ぎ目がゆるみ、制度のエッジが露出する領域に、いつも興味を抱いてきました。
そこは誰もが見ているようで、じつは情報が少なく、支配的語彙も成立していない「あたらしい野生」のゾーンです。
そこで観測し、移動し、時に実験することが、僕にとってのノマド性だと感じています。
では、これから表現者はどこに立つべきなのか。
おそらく答えは、昔のように「国家装置から逃げろ」でも「完全な外部に出ろ」でもありません。
現代の制度はあまりに巨大で、逃げ切ること自体が神話に近い。
むしろ、制度の内部でも外部でもない「第三の位置」に立つことが重要になります。
それは、制度の道具を利用しながら、しかし制度の論理では思考しないことや、可視化や評価を受け入れつつ、しかし評価基準そのものには従わないこと。
移動するが、移動によってアイデンティティを固定せず、作品を発表するが、市場に回収されない余白を必ず残すなどです。
つまり、「制度の境界条件を理解した上で、それを横断し続けること」。僕はそれを新しい意味でのノマドだと考えます。
これはドゥルーズ=ガタリの「戦争機械」の現代的な変奏であり、外部から破壊するのではなく、境界上で制度の形を変え続ける「局地的な攪乱装置」です。
これをわかりやすく、僕はよく「楽しい混乱」と表現しています。
そして、この第三の位置をもっとも強く獲得できるのは、じつは料理人や農家、医師のように「世界の物質性」に触れ続ける人たちだと考えています。
アルゴリズムではなく自然の手触りを扱い、概念ではなく温度を扱い、消費サイクルではなく生命のリズムを扱う者は、制度の外部と内部を同時に理解できる稀有な存在です。
貴君のような位置は、まさにその最前線にあります。
絶滅危惧ではなく、むしろ新しいノマドが芽吹く境界面なのだとお考えください。
「21世紀のノマドロジー」が理解されるのは、まだまだ先なのですが。
▽Q.18▼▽
高城さん、いつも新しい視点をありがとうございます。
もう10年以上拝読していますが、発信内容や考え方、取り組まれているテーマが年々大きく変化していて、そのスピードにいつも驚かされています。
良い意味で過去にとらわれず、次々と更新されていく姿勢に強く惹かれています。
私は日常や人間関係、生活環境に大きな不満がなく、現状に危機感も強くありません。
そのため「小さな改善」や「日々の努力」は続けられる一方で、思い切った方向転換や大きな変化にはなかなか踏み出せず(特に何かを捨てることが苦手な気がします)、惰性で延長線上を歩いているような感覚があります。
未来を想像すると、今のままではワクワクしない未来に向かってしまう気もしますし、社会変化の大きさを考えると、どこかで大きく舵を切る必要があるのではと感じています。
そこで伺いたいのですが、高城さんのように生活・思考・行動を大胆に変化させ続けるための「コツ」や「心構え」はどのようなものなのでしょうか?
もし、変化を加速させる具体的なアクションや、土台となるマインドセットがあれば教えていただきたいです。
【 A 】
ずっと移動しているからじゃないですかね、僕の場合は。
なにしろ、世界は驚くほどの速度で変化をしており、その変化は、実はインターネットより現実世界のほうが圧倒的に速い。
このような変化の速度を超えるように移動を続けていると、常に脳が刺激され、結果的に「良い意味で過去にとらわれず、次々と更新されていく」んだと思います。
個人的な経験からお伝えすれば、「生活・思考・行動を大胆に変化させ続けるための「コツ」や「心構え」は」、小さくてもいいので、移動することです。
たとえご不満がない「日常」でも、ウィークデーには一つ前の駅で降りて歩いてみることや、週末には「それまでの人間関係を一旦横に置き」(←ここポイント!)、ひとりで行ける範囲で移動し、その円を徐々に大きくする感じです。
そしてある日気がつくんです。
7年前には考えられなかった自分がいると。
逆も真なり、なにもしなければ、悪い意味で7年前には考えられなかった自分がいます。
それが二極化の本質なのです。
ルイス・キャロルが『鏡の国のアリス』で描いた「赤の女王」のエピソードがあります。
アリスは鏡をくぐって裏返しの世界に入り、そこで出会った赤の女王に手を引かれ、突然、全力疾走させられます。
アリスは息を切らしながら言います。
「こんなに走ったのに、同じ場所にいるわ」。
すると赤の女王が反論します。
「この国ではね、同じ場所にとどまるには全力で走らなければならないのよ。どこかへ行きたいのなら、今より少なくとも二倍速く走らなければならないわ」と。
その後、生物学者リー・ヴァン・ヴァーレンがこの寓話を引用し、進化生物学の理論「赤の女王仮説」を提唱しました。
要点は「捕食者も被食者も、病原体も宿主も、互いに絶えず進化し続けないと生存競争に負ける」、「生き残るとは前に進み続けることであり、止まれば環境の方が先に進んでしまう」のです。
この仮説は、ビジネスやテクノロジーの解釈でもよく引用され、現代社会を生き残るための「変化を加速させる具体的なアクションや、土台となるマインドセット」そのものです。
この週末、少しでも移動をはじめてください。
それが、次の世界へと続く大いなる一歩になるのです。
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■ 7.連載のお知らせ
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・MonoMax(宝島社)
「高城剛の未来インサイダー」
毎月10日発売
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■ 編集:高城未来研究所
■ 発行元:NEXTRAVELER株式会社
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┃高┃城┃未┃来┃研┃究┃所┃『Future Report』
Vol.756
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【2025年12月12日発行】